前回の投稿(「私たちが飼育しているクマムシたちをご紹介!」)で、私たちが飼育しているクマムシは全てヤマクマムシの仲間であると紹介しました。同じ科に属するクマムシたちなので、みんなそれなりに似ている、とあっさり紹介してしまいましたが、じゃあ似ていないクマムシってどんなものがいるのでしょう?

まずはこちらをご覧ください。

 

Parastygarctus sp

 

貴重なスライド標本の写真なので、元気に動き回る動画に比べて少し味気ないかもしれませんが、全く形が違うのがわかるでしょうか。まず、全体的にトゲトゲしていて、足がはっきりと体から伸びており、多数の毛というかトゲというか、突起物がでています。また、頭周りが実に特徴的で、口元が尖っており、複数の突起が左右に見られます。

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あらためて似たポーズのヨコヅナクマムシと比べてみると、全く違った形をしていますよね。

このクマムシはマネチカクマムシ(Parastygarctus sp.)という海に棲むクマムシで、クマムシの中でも最も古い形態が残っている種であると考えられています。クマムシが属する緩歩動物門の進化は、カンブリア爆発で有名なカンブリア紀よりも前のエディアカラ紀からはじまったと考えられていますが、5億年も前の地球でこんなクマムシが誕生していたかと思うと、夢が膨らみます。

マネチカクマムシも京大の藤本さんの監修でぬいぐるみになっていますよ。

ちなみに、海のクマムシは常に水のある環境にいますので、ヨコヅナクマムシのように乾眠はできません。クマムシは私たちの身近な苔にいるありふれた生き物ですが、南極や海など地球上のいたるところに存在し、やはりそれぞれの環境にしっかり適応して生活しています。

現在のところ、クマムシの仲間は千数百種類見つかっていますが、これらは大きく分けてトゲトゲしている異クマムシと、ヨコヅナクマムシのようにずんぐりしている真クマムシの2種類います。本当はこの中間と呼ばれるクマムシもいると言われているのですが、その幻のオンセンクマムシについてはまた後日。

それでは、今日は身近に見つける事ができるクマムシたちを紹介します。

1. まずはニホントゲクマムシ!

異クマムシなのでトゲトゲしています。なんとなく丸っこくて、背中の装甲板の模様が格好いいです。「クマムシ」と言うとこんな感じのトゲクマムシをイメージする方も多いのではないでしょうか。身近な苔を採取してトゲクマムシがいるとかなりラッキーです。

 

2. 体が大きいオニクマムシ!

真クマムシですが、ヤマクマムシの仲間とは結構違います。まずは特徴的な突起があって尖った口を持つ頭。長く鋭く尖ったツメ。そして、なんといってもクマムシの中でも大きめなそのサイズが特色です。オニクマムシは肉食なので、ワムシやセンチュウなどの、他の小さな生き物を補食します。草食でグルメなヨコヅナクマムシとは違って獰猛ですね。

 

3. チョウメイムシ

野外から苔を採取すると、このタイプのクマムシが一番多くでてくると思います。見た目や形はヤマクマムシにかなり似ていますが、足のツメが対称です。チョウメイムシはクロレラを食べてくれないので、いまのところ研究室内で飼育するのはなかなか難しいです。

クマムシが属する緩歩動物門は、生物分類の最上位である「門」です。私たちヒトが属する門は脊索動物門で、ここには私たちほ乳類だけでなく、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、それから恐竜までもが含まれています。さすがに脊索動物門に比べたら小さな「門」ですが、クマムシのいろんな仲間たちに出会ってみたいですね。

 

 

 

慶應のクマムシグループは、神奈川県藤沢市と、山形県鶴岡市の二カ所に拠点があります。

山形県に慶應大学?と驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。日本では主要な大学が大都市に集中していますが、アメリカなどでは地方にもさまざまな分野における最先端を担う大学が、うまい具合に分散して存在しています。慶應大学もそんな多様で強い日本の教育を創るべく、21世紀のまさに初頭である2001年に山形県鶴岡市に慶應義塾大学先端生命科学研究所を設立し、最先端の生命科学を推進しています。

当研究所のメインの建物の写真をご覧ください。

なかなか立派な建物ですが、周囲が水に囲まれているのがわかるでしょうか?実はこれ、お堀なのです。そう、山形県と鶴岡市のご厚意により、鶴ヶ岡城跡地の一角であり、鶴岡市の一等地とも言える場所に研究所があるのです。本当にありがたいことで、私たちも鶴岡発・世界一の研究成果を多く出していけるよう日夜頑張っています。

ちなみに鶴岡市ですが、日本で初めてユネスコに食文化を認められた、「おいしい」ものがたくさんの素敵な街です。よろしければ次のバカンスのご予定に是非。

早速ですが、今回まずは鶴岡側のラボで飼育しているクマムシたちをご紹介します。

 

1. ヨコヅナクマムシ(Ramazzottius varieornatus

クマムシ博士こと堀川さんが札幌で発見した、その名の通り、クマムシのチャンピオンとも言える強さを誇ります。茶色に色づいていて、一本だけ長く伸びた爪がチャームポイント。

でも、極限環境耐性は強いわりに、あまり増えず、飼育時の環境の変化にはとってもデリケートで、実は飼うのは比較的大変だったりします。

 

2. ドゥジャルダンヤマクマムシ(Hypsibius dujardini

イギリスのSciento社から購入したクマムシ。半透明で、眼点が見えるのが可愛らしい。

このクマムシは乾燥耐性がほとんどないかわりに、非常に良く増えます。なので飼育はかなり楽な種です。

ヨコヅナクマムシとドゥジャルダンヤマクマムシは、荒川が監修したぬいぐるみもありますよ!

 

3. Acutuncus antarcticus

これはレアなクマムシです。ソーシャルカードゲームで言うならSRかSSRくらい?!

なんと、このクマムシは、南極の昭和基地周辺で採取された個体を継代飼育しているものなのです!

こちらもほぼ透明で、見た目的にはドゥジャルダンヤマクマムシに似ています。でも、南極生まれなだけあって、他のクマムシよりも大分寒い環境で飼育しています。

 

これら3種類のクマムシを鶴岡の研究室では飼育していますが、全部それなりに似ていることに気がつきましたか?

そうなのです、これらは全て、ヤマクマムシ科(Hypsibiidae)という同じ科に属するクマムシたちで、それぞれ違う乾燥耐性能力を持っています。なので、乾燥耐性や極限環境耐性を調べるために比較する上で都合が良いのです。

さらに、温度などの細かい条件は違いますが、3種とも飲み物はVolvicです。

また、クロレラ(クロレラ工業株式会社の生クロレラV-12)を食べて生活しています。

なぜかヤマクマムシ科のクマムシはこの二つのブランドを好んで食べるのです。クマムシはグルメなんですね。

 

これらのクマムシの飼育の様子を、これから少しずつお伝えしていきますね。

 

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こんにちは、クマムシ博士(堀川大樹)です。本日からこのクマムシ日記をスタートすることになりました。

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クマムシ日記は慶応義塾大学クマムシグループのメンバーが、研究室内の日々のクマムシのようすや、クマムシにまつわるあれこれについて書き綴っていきます。

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